「地震にも負けない、我が子のような酒」
酒造りにこだわる/田淵徳左之門さん
淡路島の造酒屋で、味を守りつづけるのは、酒とうじの田淵徳左之門さんだ。普段は
もの静かで温和なおじさんだが、日本酒にかける意気込みは人一倍強い。いつものや
さしい目も、いざ酒樽に向かうときには鋭く真剣になる。温度や発酵のすすみ具合に
細心の注意を払うことでうまい酒がつくられるのだ。
あの阪神淡路大震災があった次の日には、崩れそうな酒蔵に入り、倒れずに残った酒
樽を見守りつづけたという逸話が残る。「酒は我が子のようなものだよ」という田淵
さんには、身の危険よりも、新たに生まれる酒が心配だったのだ。
上の真ん中の写真を見て欲しい。崩れた壁と屋根、その下に露出しているのが緑の酒
樽である。これをなんとか守り、崩れかけた屋根に支えをいれて、どうにか出荷にこ
ぎつけたのだ。
酒蔵も建て直され、今年の仕込みが終わり、酒樽の中では新しい酒が発酵して泡を立てていた。その発酵途中の酒を飲ませてもらった。米が混じっていて、ちょっと甘いフルーティーな味がした。
日本酒に携わって38年、豊富な経験と知恵がこの味をつくりだしている。丁寧に醸
造された酒は、普段日本酒を飲み慣れない僕たちでさえ、「これは違う」と思えるほ
どおいしい。酒が飲めない奴でも、自然にノドを通っていくというから不思議だ。
左の写真は、淡路・酒探偵団の高田さんとのツーショット。大震災にも負けなかった
淡路島のこだわりの銘酒「千夢酔」は、淡路島を愛する心と、日本酒にかける心意気
が生み出した逸品だ。