「香りの鉄人たちが支える日本一の線香」
日本一の線香づくり/吉井康人さん・伊郷正照さん
私の記憶が確かならば、一宮町は日本一の線香の町。その生産量は全国の約7割を占めている。
安くて質のよい線香をつくるために機械化を進める一方、
「手づくりの良さも残したい」と語るのは吉井康人さん。
西欧の香水のように、線香をより身近なものとして普及させたいと願う
「香りの伝道師」である。
線香は「タブ」という木(写真:中段の真ん中)からできている。
皮が主原料になり、肉厚の葉っぱが糊の役割を果たす。
お線香といえば、たいていは緑色。
香りも一種類しかないと思いこんでいる人が多いだろう。
ところが、タブの皮は緑色なんてしてないし、香りもついていない。
原料を練る段階で、色素と香料を混ぜるから、あの色・あの香りになるのだ。
伊郷正照さんは、吉井さんの工場を任されている線香づくりの達人。この道40年の
大ベテランで、伊郷さんの線香を超えるものは誰にもつくることができないという。
原料の練り上げから、裁断、整形、乾燥に至るまで、すべてのノウハウが「スゴイ」
のだ。たとえば、乾燥についての伊郷さんの一言を紹介すると、「線香の乾燥状態は
、指ではじけばわかるんですよ」つまり、はじいたときの音と指先の感覚だけで、
最適な残留水分(13〜14%)を計ることができてしまうのだ。
伊郷さんの手づくり線香を束ねるのは、箱詰めの達人。たった一本の細長い紙を使っ
て、決められた本数の線香を隙間なくぴっちりと束ね、つくった束を箱に詰め込んで
いく(写真:下段)。もはや、単なる箱詰め作業ではない。その「目にもとまらぬ早
業」には、誰もが見とれることだろう。
日本一の線香の町には、とてつもない鉄人たちがいた。