これは、約20年前の物語である

とある田舎のお菓子屋さんに、都会の大学のフランス文学科を卒業して

おねえさんが、帰ってきました。

「かーさんや、ケーキの新製品ができたぞ」おとうさんは、田舎にしては、

うでのいい職人さんです。

「なまえは、どうしようかね?いちごタルトにしとこうか?」とおかあさん。

おねえさん「ねえ、おとうさん、このケーキの名前私につけさせて」

おとうさん「また、こむづかしい名前つけるんだろ。うちは、町のケーキ屋

      なんだから、気取った名前つけても・・・・」

おねえさん「いいじゃない」

       「かわいい名前にしたいんですもの」

       「ビジューなんてどう?」    bijou   bijou  bijou  bijou

       「モン・ビジューがいいわ」  Mon bijou    Mon bijou

おとうさん「はいはい、モン・ビジュね」おとうさんは、どうでもいい

 

次の日、モン・ビジューは、ショウケースのまんなかに置かれ、さりげなく

デビューをかざりました。

 

小学生6人が、おともだちのおうちに、集まってた。

「ツネコ、みんなのぶん、ケーキ買ってきてあげなさい」とおかあさん

ツネコは、おともだちもう1人と連れだって、ケーキ屋さんへ

「チョコレートケーキ、6つください」

「あのこれ、あたらしい種類なんですよ」とケーキ屋さんのおかあさん

「わーおいしそう、私これにしょっ」

「じゃあ、わたしも。 チョコレートケーキ4つとこれ2つください」

 

ツネコちゃんのおうち

「わーこれおいしそう、」とみんな

「新製品なんだって」とツネコ

「これ、何ていう名前なの」

「なんだっけ?なんか、ぐにょぐにょした名前だったよね」

「そー、そー、たしか、ジャとか、ギュとかいうカンジの・・・・」

「ギョギョームとか、なんとか・・・・」

「ギョギョーム?」

「ちょっと違うような気もするけど、だいたい、そんなカンジ」

「ギョギョームね」

 

つぎのひ

シーちゃんが、まちのケーキ屋さんにいきました

「ギョギョームください」

「は?」ケ−キ屋のおかあさん

「きのう、おともだちが、買ってったんだけど、新製品の・・・」

「きのう?あ、これのことかしら?」

「あ、そうそう、これ4つください」

 

はなこちゃんもおかあさまとまちのケーキ屋さんに行きました

「おかあさま、ここよ、このお店」

「なんでしたっけ、ギョ・・・ギョ・・・」

「ギョギョーム」

「シュークリームとエクレアと、それからギョギョームっていうの

2つづつくださる?」とはなこちゃんのおかあさま

「ギョギョーム?」ケーキ屋のおかあさん

「あ、これですね・・・」

 

「おかあさん、新製品は、売れてる?」フランス文学科出のおねえさん

「ええ、朝から集中的に・・・でも・・・みなさん、ギョギョームていって

買っていくのよね」

「ギョギョーム?!」

「なんなの、そのけったいな名前は、私がつけたパリのエスプリあふれる

モン・ビジューは、どうしたの?」

 

高木くんのおかあさんもまちのケーキ屋さんへ行きました

「ギョギョームください」

 

フランス文学のおねえさんは、かなしそうです。

「ワシは、かまわんよ」

「モン・ビジューもギョギョームも大して変わらんわい」

「お客が、ギョギョームっていうんなら、ぎょぎょーむにすればいい」

とおとうさん

フランス文学のおねえさんは、だれも理解してくれない日々をおくるのです

 

その後、ギョギョームは、まちの人気者になりました

 

ということで、

ギョギョームは、モン・ビジューの変化形「私の宝石」という意味です

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

YURAI